RELAY INTERVIEW
50km以下のレースなら『Summit VECTIV Sky 2』は、第一候補に上がりますね。──上田瑠偉 #RI01
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日本を代表するプロ山岳アスリートの上田瑠偉さんにとって、シューズは山を走る上で「もっとも重要な道具」という。距離、急峻さ、岩稜帯の有無、土質などを鑑みて、レースごとに使い分けている。必然、求める完成度は高くなり、常に自分に合うシューズを探している。「Summit VECTIV Sky 2」を履いてトレイルを軽く走るとすぐに「これはレースで使えるかもしれない」と言った。トレイルランナーとしての喜びとキャリアの未来、そして「Summit VECTIV Sky 2」の評価を聞いた。


まずはプロとして走っているので、勝ちたいという気持ちです。負けず嫌いですから(笑)。ただ、トレイルランニングは勝負だけではなく、素晴らしい景色に出会えたり、応援してくださる方にその感動を届けたりもできる。それから自分自身の進化も、モチベーションになっていると思いますね。

新しい発見はやっぱり毎シーズンあります。僕は登りで引き離して、その貯金で逃げ切るスタイルだったんですね。スカイランニングの急峻な斜面ではそれが有効でしたけど、30度まで行かない斜面では、登りで引き離せない。下りで逆転する必要があるから、前半はセーブして、後半追い上げて表彰台に乗るっていう経験をしたんですね。学生時代に陸上選手だったせいか、どうしてもペースを出したくなる(笑)。でも、我慢する。ペース配分によって、パフォーマンス自体も変わってくる。そういう発見は日々ありますね。

元々、僕は「ハセツネ(長谷川恒男カップ)」から始まって、UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)シリーズのCCC101kmで準優勝した後にスカイランニングにシフトして、比較的短い距離のレースに参戦するようになったんですね。なので、ずっと100マイルには興味があったんです。勝負できるかどうかはやってみないとわからないですが、やるからにはリザルトも求めていきたい。昨シーズンから走行距離も増やしていますし、今年も秋以降は来年の100マイルに向けて、100kmのレースを入れたり、計画性を持ってやっていきたいと思っています。

20時間以上走ることが自分に向いているのかどうか、やっぱりやってみないとわからない。もしも胃腸トラブルの癖がついてしまったら、練習で改善できるのかどうか。そうなったら100マイルに固執することもないですし、結局は自分に合ったレースを選ぶと思います。でも、今まで100マイルは取っておいたんです。20代で走ってしまうと、燃え尽き症候群ではないですけど、その次の目標が見出しづらいかもしれないとも考えていたから。100マイルは準備にもリカバリーにも時間がかかるし、メンタルの強さも必要で、あんまり早く始めてしまうと疲れてしまうかも、と。でも、そろそろ走りたいと思ってます。これまでスカイランニングで磨いた技術や「GOLDEN TRAIL WORLD SERIES」のようなスピード感あるレースでの経験が、今後の100マイルでも間違いなく生きてくるはずですから。

100マイルを走るなら、急峻な山、長く走るトレイル、両方の特徴を併せ持っているシューズが必要かもしれませんね。これまで主戦場にしてきたスカイランニングは、20〜30kmでテクニカルな地形が多いから、厚底のシューズだと着地のバランスが難しかったり、急峻な登りではクッションが邪魔になったりするんですね。なので軽いけれど、しっかり接地面があって、突き上げをあまり感じない、岩場で足の裏が痛くならないシューズというチョイスでした。
日本のトレイルは土が柔らかいことが多いので、クッションが厚すぎると余計に足が疲れてしまうかもしれない。反対に路面が硬いトレイルなら、ある程度クッションもあって、反発も使えるシューズがいいのかな。僕はコースに合わせて必ず2足持っていきますが、それはシューズへの信頼感が何より大事だから。

前作からグリップ感が増して、フィット感もさらに良くなって、めちゃくちゃ良いフィーリングです。前作ではミッドソールの反発の仕方が僕の走り方と合っていなかった。踏み込むとタイムラグというか、反発が遅れるような、うまくスピードに乗れない感覚があったんですが、「Summit VECTIV Sky 2」は沈み込みが大きすぎず、しっかりと進んでくれる感覚もあるし、足捌きも良いですね。
ソールの面積のおかげもあるのかもしれない。面積が広いと、その分、圧が分散するので逆にグリップ力が減ったり、推進力に繋がらなかったりするんですね。前作から全体の面積は減っているんじゃないかな。でも親指の付け根、母指球あたりはしっかり広がっているから、グリップ力も推進力も得られている。厚底のシューズは高さがある分、捻挫も怖いんですが、小指の付け根、小指球のソールが少し出ていて、外側に倒れにくい設計になっている気がします。
本当にフィーリングが良いものは一発でわかりますね。この「Summit VECTIV Sky 2」は、まさに、という感じです。あとはスピードを出して下りを攻めた感覚と、もう少し履き込んでアッパーとの相性を確かめます。その判断ができたら、実際にレースに使える。特に50km以下のレースではなかなか「これ!」というものに出会えていなかったんですが、「Summit VECTIV Sky 2」は、第一候補に上がりますね。お世辞抜きで、素晴らしいシューズだと思います。

1993年長野県大町市生まれ。佐久長聖高校陸上部出身。2014年「ハセツネ」で、コースレコードで優勝。2019年にはスカイランナー・ワールド・シリーズの年間総合優勝を果たすなど、日本を代表する山岳ランナーとして活動を続ける。また、「JAPAN F.K.T.Journey」など自身のプロジェクトも続けている。
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