RELAY INTERVIEW
トレイルで培った安定性がロードに生かされ、力強く反発してくれるシューズ──ザック・ミラー #RI08
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Forward

アメリカ出身のプロトレイルランナー、ザック・ミラー。ザ・ノース・フェイスのグローバルアスリートとして世界の山々を駆け回る彼は、冬はオレゴン州ベンドで雪上トレーニングに励み、夏はコロラド州マニトゥー・スプリングスを拠点に高地で走り込む。そんな“山の人”であるザックが、東京の街中を走り、新たなロードランニングシューズ「VECTIV Forward」と出会った。トレイルとロードを横断する彼の視点から、このシューズのポテンシャルを探る。
ランナーにとって、とても優しい街だと感じました。空港を出てすぐ、川沿いに素敵な小道を見つけたんです。その川沿いを走っていると、たくさんの人が散歩をしたり、走ったり、自転車で行き交ったりしていて、本当に気持ちがよかったです。街なかでは、車も歩行者もとても礼儀正しくて驚きました。みんな本当によくルールを守っています。ランナーとしても、とても安全だと感じます。アメリカでは、しばしばもっと混沌として感じることもありますから。
「VECTIV Forward」は、日本の企画チームの主導で開発されたシューズですよね。半年ほど前にプロトタイプを目にする機会があり、興奮で胸が高鳴ったことを覚えています。実際に完成品を履き込んでみて、まず驚いたのはクッション性の素晴らしさです。非常に快適で、衝撃をしっかり吸収しつつ、弾力性があって力強く反発してくれます。柔らかすぎてエネルギーリターンが鈍く感じられるシューズは、あまり好みではありません。アッパーのフィット感も極上で、スピードやコントロールを損なうこともありません。もう一つの良い点は、ベースとなったトレイルバージョンと多くの共通点を備えていること。トレイルランニングシューズで走り慣れている人なら、このシューズへの移行も比較的スムーズだと思います。
真っ先に思い浮かぶのは安定性です。トレイルランニングシューズは単に速いだけではなく、岩や木の根、えぐれたトレイル、そして上下に変化する路面状況にも対応できるようにと、速さと安定性の両立という課題に向き合ってきました。そのノウハウを応用することで、速さだけでなく安定性も兼ね備えたロードランニングシューズになるはずです。ロードランニングに岩や木の根はありませんが、足首が捻じれてエネルギーを浪費したり、悪いクセがついて故障に繋がったりするのは避けたいですよね。今はボリュームのある厚底シューズが全盛ですが、そこに安定したライド感が加われば、足取りにもっと自信が持てるし、ストライドにもさらに力を込められるはずです。
トレイルが雪で覆われる冬に出番が多そうです。コンディションを問わず山を走るのが好きなので、冬でもトレイルを走っています。でも、年間を通じてロードも必ず走ります。降雪時や、トラック、ジープロードでハイペースのワークアウトをするときなどですね。そういうシーンにぴったりなので、自分のラインナップに加われば、とても心強い一足になると思います。
私のバックグラウンドは陸上競技にあるので、今でもロードランニングを楽しんでいますし、レースに出場することもあります。自分は「リズムランナー」だと思っていて、走る時のリズムやペースを感じるのが好きなんです。トレイルにもリズムはありますが、そのリズムは変化に富んでいます。ロードでは安定したリズムに乗って走る感覚で、どちらも本当に楽しいですね。また、トレイルランニングのカルチャーはロードとは少し違います。ワイルドで、自由で、ある意味クリエイティブかもしれません。ロードランニングはペース重視で、ランニングの技術的な側面により重点を置いていると言えるでしょう。お互いから学べることは多く、たとえばトレイルランナーがロードでトレーニングする場合、特定の心拍数ゾーンや負荷ゾーンを、コントロールされた環境で追求できます。トレイルとロードの両方を実践することで、大きな成果が得られるはずです。
初めてトレイルランニングをしに行った時のことを覚えています。そこは、なんというか……草の根的で、少し変わっていて、とても楽しい空間でした。ロードランニングではタイムや自己ベストの達成に重点が置かれ、私自身も常にパフォーマンスを追い求めていました。トレイルでも競争心は健在で、みんなが上手に走ろうとしたり、大きな目標に挑戦したりしていますが、あくまで温かく、フレンドリーな感じでした。そういうリラックスした空気感、つまりコミュニティや社会的な側面、楽しく遊び心のある雰囲気を取り入れるのがいいんじゃないかと思います。ふたつは異なるスポーツなので、同じである必要はありません。でもロードランニングは、ときにタイムにとらわれすぎて、他のことを見失いがちです。トレイルでは、たとえ同じコースを繰り返し走ったとしても、天候が変わったり、トレイルがぬかるんでいたりすると、タイムを比較することが難しくなります。だから、とにかく外に出て、その日その場所でベストを尽くすだけ。そもそもランニングも、とにかくベストを尽くすことなのだと思いますね。
ランニングが好きな理由は数え切れません。走る感覚が好きとか、体調が整った時の感覚が好きとか……。面白いと思うのは、ランニングに挑戦してはみたものの、三日坊主に終わる人が少なくないこと。まあ、苦手な人が多いのも無理はないですけどね。最初の2週間はちょっと辛いでしょうが、そこで諦めてはいけません。続けていくうちにようやく楽しくなってくるんです。その不快な時期を耐え忍べば、その先には楽しさが待っています。
そう思います。ランニングの魅力は、やればやるほど上達するプロセスにあります。まるでビデオゲームでレベルアップしていくように、できることが目に見えて増えるので、中毒性があります。それがきっと、みんなを夢中にさせる理由の一つなのでしょう。走らない人からすると、私はいつも同じことを繰り返しているだけに見えるようです。「飽きることはないの?」って。もちろん走りたくない日もありますが、同じように見えても、走れば常に変化が待っています。ときには体調を崩したりもしますが、また元の状態に戻るために努力をするのです。そうしたプロセス全体がとても生産的で、深い満足感をもたらしてくれます。本質的には、人生に明確な目的を与えてくれることです。私はランニングのそういうところを愛しています。
トレイルランナー。ザ・ノース・フェイス・グローバルアスリート。幼少期をケニア、20代前半をクルーズ船上で過ごし、現在はコロラド州パイクスピーク中腹の標高3100mにあるオフグリッドの山小屋で暮らしている。クルーズ船でのトレーニングを通じてJFK 50マイルやレイクソノマ50マイルで優勝し、2015年にはシャモニーのCCCでアメリカ人男子として初優勝を果たした。その後もマデイラ島ウルトラトレイル、ザ・ノース・フェイス50連覇、UTMB170kmでの複数回トップ10入りなど活躍を続ける。ペンシルバニア州の田舎で育ち、ロチェスター工科大学で機械工学を学びながら走りを続けた彼は、オフグリッドホステル「バーキャンプ」での自給自足的な生活と、GPSに頼らず感覚を重視するミニマルなトレーニングスタイルで知られている。
Runner
Zach Miller
THE NORTH FACE ATHLETE